お部屋のインテリアを変えよう!と思った時、家具やファブリックにばかり意識がいってしまいがちですが、実はそうしたアイテムを配置する“キャンバス”ともいえる「壁」の印象はとても大切です。“空間づくりは、壁で変わる”といっても過言ではないほど。住宅をはじめ、ホテルや施設等のコントラクト案件へのインテリアコーディネートの提案を行っている、株式会社サンゲツのインテリアデザイン室に所属する坂本真美さんにお話を伺い、「壁紙から考えるインテリア」のポイントを教えていただきました。

機能もデザインも豊富に。壁紙は選べる時代です

—サンゲツさまでは、壁紙や建具、カーテンといったインテリアを大きく左右するアイテムをたくさん提供されていらっしゃいます。その中でも、「壁紙」の選択肢についての昨今の傾向について、教えていただけますか。

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壁は、お部屋の中でもとくに大きな面積を占めるといわれている要素です。かつては白が圧倒的多数でしたが、昨今のトレンドとしては、アクセントクロスという形で、カラーやデザインを取り入れるケースがとても増えていますね。目的としては、『お住まいになる方の個性を出す』ということで、多くの時間を過ごすメインスペースであるリビングや、小さな空間なので思い切ったことにも挑戦しやすい水まわりやトイレなどに、アクセントクロスを取り入れられる方が多い印象です。

一般住宅において採用になる壁紙は、15年ほど前までは、白を基調にしたものがほとんどでした。
ところが、最近は、一面のみ貼り分けるアクセントクロスをご紹介すると、それがオプションであったとしても、採用される方が増えてきました。
友人知人のお宅やSNSなどで実例を目にする機会も増えて、ようやく文化として定着してきたのではないでしょうか。

—アクセントクロスというのは、具体的にどんなものでしょうか。

主に、全体に色の入ったものや柄のはっきりとしたものを主役として、一つの部屋の中で壁紙を貼り分けることをそう呼んでいます。カラーでいえば、ニュートラルなグレーやベージュ系の色は定番で大変人気の高い色です。また、ブルー系も取り入れやすく、落ち着いた雰囲気になるので人気です。デザインでは、色を抑えた大柄ものや、カラフルで個性的なもの、木目やレンガなどの質感を感じさせるものなど、豊富なバリエーションが揃っています。
サンゲツは、約4,300点の壁紙を取り扱っていますが、あまりに多すぎてもお客様が選びづらいということもあるので、アクセントクロスに人気の商品をセレクトした見本帳(2018-2020 ルームスタイリング)もご用意しています。壁紙単体だけでなく、カーテンや床材も含め施工した時のコーディネート写真を掲載して、イメージを膨らませていただけるように工夫しています。

—デザインだけでなく、さまざまな機能をもたせた壁紙もあるとお聞きしました。

はい、お客様の方から、機能を求められるケースも多くあります。アクセントクロスとともに機能性壁紙を合わせてご提案させていただくこともあります。たとえば水回り空間ですと、1面にアクセントクロスを用いてデザインをプラスし、残りの3面は吸放湿機能のあるものをご提案したりしています。お子様のお部屋には汚れに強いフィルムを貼った壁紙、ペットと一緒にお住まいの方には傷に強い壁紙や、消臭機能をもった壁紙をご紹介しています。住宅だけでなく、病院や施設、ホテルなどではカートや車椅子を利用することも多いので、よりそういった機能が重要になります。機能とデザインを合わせてご提案するのは、とても面白い部分ですね。

理想の空間づくりは全体コーディネートイメージから始まる

—壁紙を含めたインテリアコーディネートを考えるとき、まずは何から始めればいいでしょうか?

まずは「全体のイメージを決める」ということが大事です。壁紙に限らず家具などでも同じだと思いますが、単体で見てもなかなかお部屋に施工したときのイメージはわきにくいものですよね。まずはたくさんのコーディネート事例を見て、自分の好きなテイストや、気になるアイテムなどをピックアップすることから始めるといいと思います。
雑誌やウェブサイトでプロがコーディネートしたものでもいいですし、今はSNSでもたくさんの事例を集めることができますので、リソースがとても豊富です。
最初に全体のイメージを掴んでから、細かいところに落とし込んでいくという流れがおすすめです。

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—壁紙にカラーやデザインを取り入れるにあたっての基本ルールはありますか?

空間における“黄金バランス”といわれるものがありまして、メインカラー:アソートカラー:アクセントカラーが7:2:1で配置されていると、きれいにまとまる、とされています。メインとなるのが壁や床、アソートが建具やファブリック、アクセントが家具や雑貨といったイメージです。私どものアクセントクロスの見本帳(2018-2020 ルームスタイリング)では、そういった一般的なルールにのっとり、いくつかの商品を組み合わせてコーディネートしてご提案しています。

壁紙は、そもそも購入する機会がとても少ない商品ですし、施工後のイメージがしにくいことから選ぶことが難しいとおっしゃるお客様も大勢いらっしゃいます。そこで、施工例写真を大きく掲載した見本帳を作成したんです。壁紙のサンプルもついていますし、コーディネートごとに、そのデザインのポイントとなるキーワードやコメントも載っているので、テイスト別にイメージを膨らませやすいとご好評いただいています。

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—すでに持っている家具との相性なども考える必要がありそうですね。

私どもがご提案させていただく場合も、まずはお住まいになる方の好きなものや、今現在お使いの家具にどんなものがあるか、ご趣味や家族構成などを詳しくヒアリングしています。
もともとお持ちのものが多い場合ですと、アクセントクロスを使って壁にデザインをプラスすると、空間が雑多な印象になってしまうこともあります。
ものが少ないお部屋であればアクセントとして壁紙に色をつけるのもいいでしょうし、ものが多い方なら、色よりも素材感のあるものを選ぶと、居心地のいい空間ができあがります。
リフォームの時は、既存の床や建具となじむものであるかどうかも大切になってきます。

—人気のデザインテイストや、最新トレンドについて教えて下さい。

サンゲツでは毎年インテリア業界における住宅トレンドを調査し、その年のおすすめデザインとして発表をしています。2018年は「ヴィンテージからインダストリアル+(プラス)」、というのがひとつの大きなキーワードになっています。
「インダストリアル+」というのは、たとえば「インダストリアル+ボタニカル」のように、工業的な少し強めのデザインをベースにしながら、植物の柔らかさを加えて対比させるようなミックステイストの空間づくりを表しています。

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ルームスタイリング ROOM27
インダストリアル空間を演出する、タイル柄の壁紙やダークな色調がポイント。

また北欧デザインも引き続き根強い人気があります。
ただ、北欧テイストが好きな方でも、全体を統一しすぎず、他のテイストのものを組み合わせた空間づくりをするという方が増えています。
SNSなどでさまざまな組み合わせを目にする機会や発信する機会が増えたことで、バリエーションがどんどん豊かになってきていますね。

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品川ショールーム 展示
シックなダークカラーとヴィンテージ家具が醸し出す、ゆったりと流れる贅沢な時間。大人の北欧スタイル

—坂本さまはコントラクトのお仕事も多いとお聞きしましたが、住宅との違いなどはありますか?

施設などでは住宅以上にデザインだけでなく機能が求められることも多いです。傷がつきにくいもの、汚れを拭き取りやすいもの、消臭機能があるものなど、機能をもたせた壁紙も豊富なバリエーションを揃えていますので、そういったものをベースにしながら、アクセントクロスを使ったデザインのご提案もしています。
高齢者施設の場合などは、階ごとに壁の色を変えてわかりやすくしたり、居室やホールといった場所ごとに壁のデザインを変えたり、といったことを行っています。

ホテルの客室も、アクセントクロスのご要望が高い場所です。数年前までは、客室のベッドのヘッドボードの上部にアートワークが飾られるケースをよく見かけましたが、地震災害等への配慮から、それらの代わりにアクセントクロスを用いてデザインをプラスするのが主流になってきているようです。

また、一般的にホテルは住宅の“ワンランク上”の空間、憧れの詰まった空間であるといわれ、ホテルや旅館に宿泊された方がご自身の住まいの参考にされるケースも多いのではないでしょうか。
ホテルと住宅に限らず、昨今はジャンルごとのボーダーがなくなり、距離が近づいてきている実感がありますね。
自宅をカフェのような空間にしたり、病院の壁紙を白一辺倒でなく、くつろげる居室のような雰囲気にしたりと、本当に多様化してきています。

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ルームスタイリング ROOM31
塗り壁のような表情が素朴で温かい、穏やかな時が流れるダイニングルーム

risoraでさらに広がる、理想の空間づくりの可能性

—壁紙と近い場所にあるインテリア要素として、“エアコン”に対する坂本さまの印象を教えてください。

弊社の壁紙見本帳の施工例写真では、今までエアコンまで設置して撮影することはありませんでした。でも実際のお部屋では、必ずといっていいほど設置されているものですよね。
デザインコーディネートを担当した案件でも、施工後にエアコンが取り付けられた状態を見てみると、その部分だけ少し浮いてしまっているように感じることもありました。
そして、それは仕方のないことだ、エアコンとはそういうものなのだと無意識のうちに諦めていた部分があったと思います。

—「risora」はインテリアとしてのあり方も意識したエアコンとして登場しました。

はい、「risora」は本当にすごいところに目をつけられたなと、新鮮な驚きをもって拝見しました。今まで変えられないものだと思っていたものが、選ぶことができるんだと思うと、可能性が広がりますね。
とにかく薄くてコンパクトなので、埋め込み式の空調が多い海外の住宅のように、目立たないように空間をつくることもできるし、豊富なカラーバリエーションがあるのでアクセントとして使うこともできますよね。デザイナーとしては、とてもワクワクします。

—坂本さまが「risora」をコーディネートされるとしたら、どのように使われますか?

risoraの正面パネルにサンゲツの壁紙を貼った質感シリーズの中から、ブルー系の「和紙」を選んで、ブルーのストライプの壁紙と合わせるのはいかがでしょうか? ブルーが響き合い、良いアクセントになりそうです。

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ファイン P17 FE6346(横張り)
部分的なストライプ使いがポイント。クラフト感溢れる優しい空間

こちらのお部屋は、天井材にチークが使われているので、そちらに合わせて「チョークドオーク」パネルのrisoraを選んで展示する予定です。壁紙は、最近人気の高いムーミンシリーズです。可愛らしさがありながら落ち着いた北欧デザインで、大人の女性に選ばれています。risoraの「チョークドオーク」はホワイト系であっても“真っ白”ではないですし、プラスチックの質感と異なる木目の優しさが、お部屋の中で浮いてしまうことなく、きれいにまとまります。

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名古屋ショールーム モデルルーム
切り絵のようなクラフト感あるムーミンとお花の壁紙は、レトロで心地よく温かみのある雰囲気を演出します。
大人も子供も楽しめる楽しげなコーディネートです。

ブルーを基調にシックにまとめた空間には、「大理石」の壁紙パネルのrisoraを合わせると、高級感が出ますね。品川ショールームに展示しているお部屋コーディネート事例では、ちょうど大理石のテーブルを使用していますので、同じ壁上にrisoraを設置すれば、まとまりのある空間になりますね。risoraでなければ、どうしてもプラスチックの質感が浮いてしまい、お部屋全体の落ち着いたイメージが損なわれてしまうことになるかもしれません。

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品川ショールーム 展示
クールテイストのインテリアが開花しはじめた1930年代スタイルが回帰。
時代をミックスさせたトレンド感のある上質なプレモダンスタイル。

2018年のトレンドにもあった「インダストリアル+ボタニカル」や、「カフェ風」など、植物がポイントとなるようなお部屋には、グリーン系のrisoraが合うのはもちろんですが、植物と相性のいい質感シリーズの木目調パネルも合わせてみたいですね。

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品川ショールーム 展示
ときの流れを感じさせるモノたちと、自然をモチーフにしたデザインに囲まれて過ごす、やさしい印象のボタニカルスタイル。

—壁紙とrisoraで、より理想の空間づくりの可能性が広がりますね。

サンゲツの見本帳にあるコーディネート写真では、お部屋全体のコーディネート写真を掲載していますが、今後はエアコンも含めてご提案できればいいですね。お客様は細かいところまでよくご覧になっていて、わざわざ弊社にお電話くださり、掲載されている壁紙以外のアイテム、たとえば照明や家具について、お問い合わせをいただくこともございます。risoraなら全国の量販店でも購入できますし、新しいインテリアの要素としてエアコンをとらえていただいて、コーディネートのハードルを低く感じてもらえるといいなと思っています。

壁紙もアクセントクロスが普及してきたのはここ数年のことですし、エアコンに関してはまだまだこれからですよね。今後どんな展開になっていくか楽しみです。

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