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壁掛形エアコン
  • risoraのhiwa episode1 とことん薄いエアコンへの挑戦

「とにかく、とことん薄いエアコンを作ろう!」
大号令からスタートした「risora」の開発プロジェクト。
それは、お客さまの視点から“エアコンのあり方”を見つめ直すという
新しい製品づくりへの挑戦でした。

「コンセプト決定までの長かった半年」 「コンセプト決定までの長かった半年」

一般的なエアコンは機能や仕様が決まった後に、
それらに見合った部品を収める室内機のデザインが考えられます。
しかし、「risora」のプロジェクトでは、あくまでもデザインが優先でした。

しかし、見た目のデザインはメンバーそれぞれに“好み”があり、
なかなかメンバー全員が合意できるデザインを見つけられずにいました。

商品開発の責任者である岡本は、その時の心境をこう話します。

「デザインが決まるまで、我々、技術屋はあれこれ想いをめぐらせ、検討を重ねるわけですが、
なかなかデザインが決まらないため、
開発を本格的に進めるわけにも行かず、
何やら悶々としていました」

さらに、空調営業本部の北村亮人はチームの様子をこう振り返ります。

「たしかに焦りはありましたが、なかなか合意に至らないのはメンバーそれぞれが強い思いを
抱いているということで、それはみんなも承知していました。時間をかけて話し合いを重ね、
見た目の議論から「どんなエアコンにしたいのか」という
コンセプトの議論に立ち戻ったことで、
ずっと平行線をたどっていた議論がついに動き出したのです」

デザイン検討から、約半年が経った頃、
“部屋になじませる”というデザインのコンセプトに行きつきました。
プロジェクトに関わる全員が、初めて納得して同じ風景を見ることができた一瞬でした。

また、デザインコンセプトが決まったことで、「risora」最大の特長である
業界最薄の奥行き185mmと幅798mmいう室内機の大きさが決定しました。
奥行185mmは、これまでの「うるさら7」の奥行きの半分、
それは平均的な成人の手でたとえると、手首から指先ほどの短さという驚きの薄さでした。

*ダイキン調べ(2017年9月28日現在、家庭用ルームエアコンにおいて)

「業界最薄*185mmという薄さのこだわり」 「業界最薄*185mmという薄さのこだわり」

開発リーダーの岡本は当時の課題を振り返ります。

「いかにコンパクトで、すばらしいデザインでも、機能が伴わなければ
お客さまに満足していただけません。これまでダイキンが開発してきた機能を
薄くて、小さな室内機にいかに詰め込むかが大きな課題でした」

ダイキンがこだわる、人が不快な風を感じにくい垂直気流や天井気流、除湿機能、
独自の清浄技術であるストリーマ機能をすべて搭載することが目標となりました。

しかし岡本には、この途方もないチャレンジが、
絶好のチャンスであることも分かっていました。

「エアコンの風は直接当たると、暖房であっても寒さや乾燥を感じ、不快につながります。
やはり、暖房時は床暖房のように足元から温かくなる気流、
冷房時は、冷気が天井から降りてくるように涼しくなる気流をつくることが
一番快適だと思います。
どんなにコンパクトな室内機であっても、そうした技術は絶対に搭載しなければ
お客様の快適さや満足は得られないと確信していました。
ですから、薄型だから性能面で妥協するという考え方は、初めから頭の中にありませんでした。
逆に、『制約』は、開発チームにとって新たな技術開発にチャレンジできる
絶好のチャンスだと思っていました」

「航空機にヒントを見つけました」 「航空機にヒントを見つけました」

既存の概念を覆す発想が不可欠となる今回のプロジェクトには、
ロジカルな思考はもちろんのこと、
自身のライフスタイルやデザインにもこだわりを持っている若い世代の発想が必要でした。

入社8年目の大下奈緒子はまさに最適な人材でした。
彼女には、開発メンバーとして自らの発想を活かしながらも、
若手と中堅メンバーの意見を取り入れ、橋渡しをおこなうという重要な役割が与えられました。

しかし、奥行き185mm、幅798mmという限られたスペースの中に、
ダイキンこだわりの機能を妥協なくレイアウトすることは容易ではありませんでした。
既存のパーツを押し込むのではなく、ファンやフラップ(気流を制御する羽)といった
独自の気流を支える主要部品を「risora」のために新規開発することが必要でした。
駆動部に至っては新たな技術をいちから開発するなど、
全ての箇所に、開発チーム全員の知恵と努力を注ぎこむ必要がありました。

大下は当時のことを次のように話します。

「メンバーに選ばれた時からとても革新的な製品の開発になることは予想されました。
前向きな気持ちと不安が入り交じる複雑な心境でした。
でも、チーム内はざっくばらんに意見が言える雰囲気だったので安心しました。
自分が担当する部分の技術だけでなく、プロジェクト全体の動きを
なるべく俯瞰的に見ながら仕事を進めるように気をつけていました」

そんな中、まず、ひとつめに直面した課題はフラップ技術のハードルでした。
コンパクトな「risora」の構造上、あたたかい風とつめたい風に挟まれるフラップには
これまで以上の高い断熱性が求められました。

「設計するのは極めて難しい構造だったのですが、
フラップに使用する樹脂の肉厚を0.5mmまで薄くして、
さらに断熱材をサンドする構造を採用しました。
また、本体が小さくなったことで、大きなリビングのすみずみまで届く
10m以上の天井気流を作り出すことも大きな課題なりました。
これには航空機の羽根にヒントを得て、空気の剥離を防ぐスリット技術を採用しました。
エアコンとしては初めての試みです」

この2つのフラップ技術は、今後のエアコンづくりに貢献するものとして、
それぞれ特許出願中です。

こうして、乗り越えたように見えた技術的課題との戦いでしたが、
業界最薄を目標とする「risora」の開発には、
これらのフラップ技術の課題だけでなく、
まだまだ克服しなければならない課題が次々と待ち受けていたのです。